 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |

東京・丸の内、東京駅の西側に位置する三菱一号館は、1894(明治27)年、開国間もない日本政府が招聘したイギリス人建築家、ジョサイア・コンドルによって設計されましたが、老朽化のため1968(昭和43)年に解体。その後、2010年に三菱一号館美術館として再建されました。明治期の設計図や解体時の実測図を基に、建築技術まで忠実に再現した建物や内装は、いまでも新鮮な感動を与えてくれます。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |

美術館に足を踏み入れる前にまず、堪能しておきたいのが建物外観です。丸の内再構築計画の一環として誕生した「丸の内パークビルディング」と一体化していますが、皇居から続く馬場先通り側から美術館入り口に向かうとまるでタイムトリップをしたような感覚に陥ります。
1894年に竣工された「三菱一号館」は、丸の内最初のオフィスビルで、基礎は松杭、構造は帯鉄によって開口補強された耐震レンガ、屋根はクイーンポストトラスの洋風木造小屋組、屋根葺材は国産スレートが使われていました。その記録や当時の写真、解体時に保管された部材からの調査を経て復元されたのが、今の三菱一号館美術館です。ジョサイア・コンドルが設計した当時の姿に可能な限り近づけた建物の存在感には、美術品と同様な感動を覚えずにはいられません。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |

1852年イギリス・ロンドン生まれ。1877年、西洋建築に携わる人材の育成や西洋に劣らぬ官公庁建築設計のため、明治政府の要請により来日。教育者としては、辰野金吾や片山東熊、曾禰達蔵ら近代を代表する日本人最初の建築家を育成し、建築家としては、官民問わず100を超す建築物を設計しました。 |
|
 |
 |
 |
 |

美術館内に併設されている「三菱一号館歴史資料室」では、40分の1の模型や映像によって復元の経緯や丸の内の歴史を知ることができます。外観の装飾や、実際には遠くからしか見られない屋根飾りなどの細部も、模型で見ると全体のバランスがつかめます。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |

美術館としての機能を果たすために、最新の設備で整えられていながらも、展示空間に活かされた板張りの床や石製マントルピースは、当時のインテリアをイメージさせてくれるでしょう。
「小屋組」という内側から構造体を見られる展示室では、天井裏に注目してみてください。鉄製の接合金物が使われていた継手まで復元されています。1968年の解体実測図をもとに構造解析をしたり、ジョサイア・コンドルが設計した旧岩崎邸の小屋組も参考にしたとのこと。
そしてレンガ壁に近づいてみると、ところどころに黒いレンガが混じっているのがわかります。これは「木レンガ」と呼ばれるもので、木製の建具を壁に直接取り付けるために仕込んでおくもの。均一でない表面でも家具をしっかり支えられる工夫ですが、何もない状態だと壁面のアクセントにも見えますね! |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |

正面入り口から上がる幅広い階段の2階部分では、手すりの装飾に注目です。伊豆の青石が使われていた石階段を復元していますが、一部分だけ、当時の実物が埋め込まれています。それが、ほんの少し色味と手触りが違うところ。現代でこそ型取りして量産できる装飾部分も、当時は職人たちがひとつずつ彫刻していたのだとか。ひんやりとした石に、熟練の手技による温もりを感じます。 |
|
 |
 |
 |

展示室を移動しながら見られるのは、こちらの鉄骨製階段です。イギリスから輸入していたのは、単に装飾性の問題だけではありません。レンガ造りで窓の少ない建物では、窓際の階段からも光を採り入れていたのです。階段の蹴上げ部分の細工も当時のまま。 |
 |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |

こちらも展示室を移動しつつ、内部から見て欲しい細部です。
屋根の上の棟飾りと、雨樋を固定する金具。機能性だけを形に求めない、
豊かな心が細部に宿っているのではないでしょうか。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |

かつて銀行営業室だった空間は、明治時代のクラシカルな雰囲気をそのままに、ミュージアムカフェとなっています。館内からだけではなく、表通りにも面した開放的な雰囲気は、2階吹き抜けを6本の柱だけで支える見事な構造から生まれるものでしょう。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |

当時、照明器具はすべてガス灯だったそうです。それが判明したのは、ガラスのホヤの下にガスを調節するコックが付いていたから。現代でも形をそのまま活かした真鍮製の立ち上がりと乳白色のガラスの照明が、重厚なインテリアのポイントになっています。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |

窓には、新丸ビルを解体した時の実際のガラスが使われています。昭和、戦後に作られたガラスは厚みがあり、絶妙なゆらぎが自然光を柔らかく届けているのです。
2階の回廊部分は現代の機能を追加するため、手すり部分が塞がれてしまいましたが、入り口の上だけ一部、当時のままに復元。ここから差し込む光も美しい! |
|
 |
 |
 |
 |

カフェの床は当時、ミントンの陶器製だったというから驚きです!モノクロ写真から検証したものなので、色合いは確実ではないものの、木製家具と相まって落ち着いた印象の幾何学模様で統一されています。 |
|
 |
 |

「この場所は当時、銀行として営業を行っていた部屋なので、復元とはいえ銀行で使用していた家具をそのまま導入するわけにはいきませんでした。でも、カフェ用に昔風の家具を揃えるだけでは、却って違和感が残ってしまいます。そこであえて、オリジナルのデザインで家具を新たに製作することにしました」と語ってくださったのは、三菱一号館美術館の石神森さん。当時の設計資料や、輸入台帳、家具の発注記録まで遡って調査したところ、家具は当時から国内で製作していたことが分かったそうです。
今回はgrafに依頼し、昔の面影を残しつつ、現代の素材や技術で仕上げたチェアやテーブル、ソファが完成しました。背面や脚の裏側など、見えない部分に施された装飾は、手に触れると気づくような、さりげなさが効果的ですね。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |

内装や家具類を見ているだけでも満たされる三菱一号館美術館のミュージアムカフェですが、普段から気軽に立ち寄ることができるのも大きな魅力です。作品鑑賞後にはカフェで一息、夕方にはイギリスのバースタイルで、待ち合わせなどにも最適な場所です。
現在開催中の「トゥールーズ=ロートレック」展にちなんだランチやディナーも楽しめます。メイン料理・デザートは美食家でもあったロートレックの料理本から、シェフがインスピレーションを受けて現代風にアレンジして再現したメニュー。近代美術史のなかでも豊穣な19世紀末に活躍したロートレックの美意識を彷彿とさせます。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |

<ロートレック展限定ディナー>
|
|
 |
 |
 |

<ロートレック展限定ランチ> |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |

ミュージアムショップでは、アートグッズやデザイングッズに限らず、世界中から商品がセレクトされています。東京駅が近いことから、鉄道関連のものや、昭和を感じさせる小物なども充実。
商品にばかり目がいってしまいますが、ここでもレンガ造りの内装をじっくり見ることができます。構造上設計されたアーチ状の壁面をディスプレイとして活かす技は、インテリアにも取り入れられますね。 |
|
 |
 |
 |
 |
 |
一号館ミニレンガ
STORE1894オリジナル手ぬぐい |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
左
《ディヴィアン・ジャポネ》
1893年
リトグラフ、ポスター
三菱一号館美術館
右:
《ムーラン・ルージュ、
ラ・グーリュ》
1891年
リトグラフ、ポスター
三菱一号館美術館
 |
|
 |
オディロン・ルドン
《グラン・ブーケ(大きな花束)》
1901年 パステル、画布
三菱一号館美術館
 |
|
 |
 |
|
 |

© ホンマタカシ © 太田拓実 画像の無断転載を禁止します |
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|