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インテリアをつくるひと File.01 氷室 友里

布を通して、日々の暮らしに驚きや楽しさを届けたい

日常を舞台に驚きと笑顔をもたらすちょっと異色のテキスタイルデザイナー

Photo by Toru Kometani

ポエティックな柄が織られた布の表面、緑の芝生を模した糸にハサミの刃を入れる。「切っちゃって大丈夫?」。戸惑いながら刃を進めると、その下に現れたのは茶色の大地と蝶やトカゲのかわいい姿。
誰もが思わず笑顔になってしまう二重構造のテキスタイル「SNIP SNAP」を生み出したのは氷室友里さん。今注目のデザイナーです。

Photo by Toru Kometani

「この『SHIBA』のデザインは、祖母の家の庭で見た風景がヒントになっています。柄の芝刈り機も実際に自宅にあったもの。実際に見たり体験したものをモチーフにすることが多いですね」
デザイナーの父親の影響もあり、幼いころからデザインに興味があった氷室さん。中でも日常に密着した、暮らしが楽しくなるプロダクトを手がけたいと思っていたそう。身近な風景をモチーフにすることが多いのもうなずけます。
氷室さんのテキスタイルは複数の柄を重ねたり、表裏でまったく異なる絵柄にしたりと、複雑な構造が特徴。これらはジャカード織りでつくられています。

「留学先のフィンランドでジャカード織りの技法を学びました。経糸と緯糸の組み合わせでさまざまな柄が表現でき、この経験でテキスタイルを構造から考えるようになったんです」。感覚的に絵を描くのではなく、柄を表現するために構造から理論的に考案する。プロダクトデザインにも通じる考え方で、ほかにはないテキスタイルを発表しています。
現在、自身のブランドで新たなデザインを行うかたわら、企業とのコラボレーションや商品開発にも熱心にかかわっています。今挑戦しているのはカーテン。「昼夜で見え方が変わるカーテン用のテキスタイルをつくりたいのですが、なかなか難しくて。いつか実現させたいです」。窓辺に氷室さんがデザインしたカーテンを掛けたら、楽しく幸せな空間になること間違いなし。実現する日が楽しみです。


切って新しい風景が生まれる
心躍るテキスタイル

切って新しい風景が生まれる
心躍るテキスタイル

SNIP SNAPの「SATOYAMA」は、氷室さんが訪れた岡山県西粟倉村の里山がイメージソース。山に暮らす動物や人々、木々が描かれたテキスタイル(左写真)の緑の糸をカットすると、魚が泳ぐ川や湖が姿を現します(右写真)。

Photo by Toru Kometani

ジャカード織りの特性が生きる
“両A面”のブランケット

ジャカード織りの特性が生きる
“両A面”のブランケット

「BLOOM」コレクションの「DALIA」は、一枚の布の表面に大輪のダリアの花、裏面に茎と葉が描かれたブランケット。写真のように一部を折り返して壁に飾っても素敵。

Photo by Kohsuke Higuchi

氷室 友里 (ひむろ・ゆり)

2013年多摩美術大学大学院テキスタイルデザイン領域修了。在学中にフィンランド・アアルト大学へ留学し、日本とフィンランドでテキスタイルの技術を学ぶ。会社勤務を経て16年に独立、テキスタイルブランドYURI HIMUROを立ち上げる。18年、株式会社HIMURO DESIGN STUDIO設立。 http://www.h-m-r.net/

La Finestra Vol.21より転載

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