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インテリアをつくるひと File.3 佐藤友佳理

デジタルとアナログ、人と人。
新しいネットワークで新しいものをつくる

グリッド状に張り巡らせた糸にポツポツとまとわりつく和紙。意思を持つようにうねる台形のフレーム。この不思議な形の衝立の作者、佐藤友佳理さんは、元モデルというユニークな経歴の持ち主です。
「イギリスでメイクの学校に通いながらモデルもしていました。ただ昔から絵が好きで、和紙の生産が盛んな愛媛県内子町で育ったこと、父親が愛媛県と新しい和紙の開発を始めたことなどが重なり、和紙のデザインに携わることに」

東京でデザインの基礎を学びながら地元愛媛に通い、開発に参加。和紙の原料である こうぞ の繊維に鉱物のゼオライトを付着させ、湿度調節や消臭の機能を高めた「呼吸する和紙」が誕生します。この和紙を使った製品をデザインする際に役立ったのがイギリスでの経験。ファッションやアートに近い世界にいたことも大きく、自由で豊かな発想に影響を受けたそう。この経験を自分なりに解釈し、伝統的な和紙工芸に異なる要素を組み合わせて最初に製品化したのがモビールです。円形の枠に沿って規則的に張り巡らせた糸から生まれるモダンな幾何学柄は、以降作品の方向性を決める要素となります。

もうひとつ作品に大きな影響を与えたのがデジタルファブリケーション 。もともと3Dプリンターに興味があった佐藤さんですが、後に夫となる寺田天志さんとの出会いが転機に。元カーモデラーでデジタルによる人形浄瑠璃の継承にも携わる寺田さんの協力もあり、冒頭の衝立「uneri」や照明「hineri」など独創的な作品が誕生。これらには、デジタルで設計した形を実現するための伝統的な建具の技も欠かせないと言います。「目指すのは、新旧の素材や技術を融合させた新しいものづくり。今後は和紙に限らずさまざまな素材の可能性を追求したいと思っています」。新たに夫婦でクラフトラボをスタートさせたそうで、次の作品も楽しみです。

※3DCGなどのデジタルデータをもとに、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を用いて素材を切り出し、ものを制作する技術


今のインテリアになじむ新たな和紙製品の形

「呼吸する和紙」初の商品、「呼吸する和紙のモビール」。和紙をもっと今のインテリアになじむものにしたいとデザインされたものです。木の枠に均等に打った釘に規則的に糸をかけて幾何学柄を描き、 こうぞ を溶かした水槽に浸けて漉き上げます。レースのような軽やかな姿で窓辺を彩ります。


単純な紙としての存在感と複雑な形状から生まれる美

(左) (上)「呼吸する和紙」のスクリーンを用いた「L邸」(設計:隈研吾建築都市設計事務所)。木漏れ日のような柔らかい日差しが注ぎます。
(右) (下) デジタルファブリケーションを初めて取り入れた和紙照明「hineri」。デジタル技術の導入が伝統工芸に新たな可能性を見出すきっかけに。


工芸とデジタルをつないで見えた
新たなものづくりの可能性

工芸とデジタルをつないで見えた
新たなものづくりの可能性

「hineri」の後に発表した衝立「uneri」。デジタルファブリケーションを活用して波のうねりのような形を表現しました。素材としての和紙の美しさ、デジタル設計による微妙なカーブ、木枠を製作する建具職人の技、そのすべてが融合して生まれた新しい和紙工芸の姿です。パーツごとに製作しジョイントするため、サイズを変えたりバラバラにして搬送することも可能。

佐藤 友佳理 (さとう・ゆかり)

ファッションモデルとして活動後、桑沢デザイン研究所でグラフィックデザインを学ぶ。卒業後に愛媛にて和紙制作に着手し、2012年「りくう」設立。和紙製の雑貨や建具、照明などを制作するほか、店舗・宿泊施設等の和紙装飾なども行う。19年、和紙照明「hineri」がイタリアのA`Design Award 2019で銀賞を受賞、衝立「uneri」が金沢・世界工芸コンペティション入選をはたした。
https://www.requ.jp

La Finestra Vol.23より転載

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